着物の「しきたり」にこだわりすぎるのはやめよう
40年前と比べると和服産業の市場規模は一兆八千億から三千億と六分の一に減少したという。このままでは滅びてしまうだろう。もう少し着物を着る人が増えて欲しいものである。
ところで、ネットで着物の記事を色々と見ていると、見知らぬ人がから注意を受けたという話が結構出てくる。
「白足袋を履くな」
「襟元が崩れている」
「羽織と長着の格がおかしい」等々である。
僕は齢をとっている所為なのか、顔が怖いのかは良く分からないが、幸いなことにこういった経験は一度もないが・・・・。
一番、酷いと思ったのは、ある若い女性が歌舞伎座に木綿の着物で行った時に、見ず知らずのおばさん連中から
「木綿の着物で歌舞伎を観にくるなんて・・・・」
と注意を受けたという話である。
その、おばさん連中は着付けのプロだと自称していたらしい。おばさん達の言っていることが、もし着物のしきたり的に正しいとしても、そんな注意を受けた若い女性は着物を着ることが嫌になってしまうだろう。
おばさん達は善意で、そして長年守ってきた正しい着物のしきたりや伝統を若い世代に伝えたいと思っているかもしれない。着物を愛している人たちかもしれない。
しかし、これでは贔屓の引き倒しのようなもので、着物嫌いをかえって増やしてしまう。
そもそも、伝統だしきたりだと言っても、時代に合った納得性や合理性がなければ、単なる頑迷陋習である。そして、着物を着る若い世代がいなくなれば、伝統もしきたりもなくなってしまう。
本当に着物を愛するのであれば、温かい気持ちで若い世代が着物にチャレンジすることを見守ってあげて欲しい。
更に言えば、このようなケースで、見ず知らずの人間に上から目線で注意をするのは、人としてのしきたりに反しているのではないだろうか。
演劇でも着物でも、贔屓(ひいき)の引き倒しはやめた方がいいと思う。
(絹の長着に木綿の羽織。しきたり的には間違ってます)